多様性を守る

絶滅危惧植物保全

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絶滅危惧植物保全

筑波実験植物園では、様々な絶滅危惧植物を保全していますが、なかでも絶滅危惧植物が集中するグループ(シダやラン)、絶滅危惧植物が集中する環境(池や湿地)に生育する水草、絶滅危惧植物が集中する地域(琉球列島)をキーワードに早急な保全を必要とする絶滅危惧植物に重点を置いて系統維持を行っています。

シダ植物の保全

維管束を持った種子を作らず、胞子で増える植物をシダ植物と言い、およそ4.2億年の古生代から知られ、現在約1万種が生存しています。筑波実験植物園では約850種類の東アジアから南太平洋地域のシダが研究と保全のために維持されています。屋外にはテーマごとに展示したシダ園があります。

主に圃場の非公開栽培温室で、環境庁2007年版の日本産絶滅危惧シダ植物197種類の内、77種類(39%)を保有しています(2009.1現在)。このうち絶滅種(EX)とされたシビイタチシダは3系統5株収集保持しています(野生絶滅(EW))。当園は植物園協会絶滅危惧シダ植物の収集保全拠点園で2010年までに50%の収集を目指しています。

対策:ネットワーク、増殖と危険分散、胞子保存、施設の充実。

       
  非公開栽培シダ温室   クマヤブソテツ(絶滅危惧IA類)  

シビイタチシダ
(野生絶滅)

 

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ラン科植物の保全

ラン科は約25,000種からなる植物界最大の科です。つくば植物園では研究と保全のため約3,000種のランを育てており、世界有数のラン科研究施設として知られています。咲いているランの一部は、熱帯雨林温室などでご覧いただくことができますし、年にいちど開催するラン展では多くの種類を展示します。

コレクションを系統保存するバックヤード

植物の種それぞれに、生育可能な環境は異なります。バックヤードで多様な環境を人工的に作り、種ごとの生育特性を熟知した技術者が管理しなければ、植物を保全することはできません。

アキザキナギラン
Cymbidium aspidistrifolium

西南日本に分布するシュンラン属の一種。オオナギラン(Cymbidium lancifolium)と同一種とされていましたが、つくば植物園での研究の結果、両者は異なる種であることがはっきりしました。

マラクシス・イワシナエ
Malaxis iwashinae

つくば植物園が南太平洋のバヌアツで行なったフィールド調査の折に発見した新種です。

バケツラン
Coryanthes macrantha

動物をおびき寄せて花粉を運んでもらうため、植物の花はさまざまに進化しています。バケツランの花はもっとも特殊化したもののひとつです。

水草の保全

水生植物約40科160種類、日本産については約222種類のうち121種類(54%)が栽培保存されています。
国内外を問わず、水辺環境は自然破壊が強く進んでいる場所の1つです。日本の水生植物の41%は絶滅危惧種ですが、筑波実験植物園ではその49%を保存しています。淡水から汽水、海水域に至る栽培環境を備え、水生植物全体に対応できるようにしていることも特徴の一つです。コレクションの内容は、トチカガミ科、汽水生水生植物、サトイモ科、などが特に充実しています。

     
 

圃場での水草保全の様子

  ミズアオイ(ミズアオイ科)  

カワツルモ(Ruppia maritima)
カワツルモ科 準絶滅危惧

汽水域に生育。汽水域の水草は種数が少ないため、絶滅した時の生態系への影響はとても大きいです。

ウミショウブ(Enhalus acoroides)
トチカガミ科 絶滅危惧(監)類

熱帯の海中に生育します。海水生の水草の多くが絶滅危惧種です。

コシガヤホシクサ(Eriocaulon heleocharioides)
ホシクサ科 野生絶滅

野生からは姿を消した水草。最後の自生地である茨城県砂沼への野生復帰を目指して保全研究を進めています。

クロモ(Hydrilla verticillata)
トチカガミ科

水面で受粉する水草。植物園で栽培した個体を詳しく観察することで、受粉の仕組みが明らかになりました。



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琉球列島植物の保全

琉球列島は九州から台湾に至る約1,300kmに連なる島々からなります。この琉球列島の植物相は、隣接する複数地域から影響を受けて成立したこと、島嶼的隔離が種分化に強く作用したことにより非常に高い種の多様性が認められます。一方、残念なことに日本で最も絶滅危惧植物が集中する地域でもあります。筑波実験植物園では、琉球大学など他研究機関と協力して琉球列島の絶滅危惧植物種を保全栽培するとともに、それらの系統・分類学的研究を行っています。

奄美大島の固有種アマミカタバミ
(カタバミ科 絶滅危惧IA類)

西表島の固有種イリオモテガヤ
(イネ科 絶滅危惧II類)

奄美大島の固有種アマミアワゴケ
(アカネ科 絶滅危惧IA類)

奄美大島・沖縄島の固有種イソノギク
(キク科 絶滅危惧IB類)

琉球列島の固有種シマイワウチワ
(イワウメ科 準絶滅危惧)

伊是名島の固有種イトスナヅル
(クスノキ科 絶滅危惧IA類)

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