筑波実験植物園

 

 

 

 

 


 
熱帯雨林温室で展示しています

一斉開花前のインド・ミゾラム州メロカンナ竹林内で、地表を掘り起こして地下茎のつながりを調査する様子

一斉開花で枯死した様子

結実したメロカンナの巨大な実とその断面
実はおいしく、料理して食べられる

 

 

 

 

 

メロカンナ・バクシフェラ
Melocanna baccifera (イネ科)

 日本人にとって最も身近な植物の一つであるタケ、ササの仲間には、同じイネ科の草本からは想像できないとても奇妙な特徴があります。それは一斉開花、結実と呼ばれる現象で、例えば前回の開花から数えてマダケでは約120年、モウソウチクでは67年目に突如として竹林全体の開花が起こり、一斉に枯れてしまった例が報告されています。
タケの一斉開花でとても不思議なのは、たとえタケの一部だけを掘り取って全く別の場所に植え替えても、やはり決まった時に元の場所のタケと同調して一斉開花が起こることです。このことは、タケが何らかの方法で発芽から何年経ったかを測る『時計』の仕組みを持っていることを示しています。
 このタケの一斉開花の謎を解き明かすため、東北大学、森林総合研究所、宮崎大学、秋田県立大学、京都大学の合同調査チームはここに展示されているインドのタケ、メロカンナ・バクシフェラに着目しました。このタケはインド東部のかなり広範囲で竹林を形成しており、建築材として重要なものです。一斉開花が起こるとそれが全て枯れてしまい、また同時に極めて奇抜で大きなナシのような実を大量につけ、それを餌にするネズミの大量増殖を引き起こし、集落の食料が全て食べ尽くされてしまうということです。このように、とんでもない「事件」になるということから大変古くから開花の記録が残っており、それによると1815年、1863年、1911年、1958-1959年とちょうど48年周期で起こっていました。調査チームは前の開花のちょうど48年後、すなわち2006-2007年に現地におもむき、予測通りの一斉開花、結実を観測したのです。その結果、同じ地域のほとんどのタケが一斉開花するのに対し、ほんのわずかにその前や後の年にずれて開花するものがあることや、2008年、2009年にはこの調査地からやや離れた西側地域で順々に一斉開花が起こっていたことなどが明らかになっています。
 ここに展示されているメロカンナはそれぞれ2007年、2009年の一斉開花によってできた種子が発芽したものですから、次に開花、結実するのは2055年、2057年ということになります

4月8日撮影(1年目と3年目の株を展示) 
展示協力:陶山佳久(東北大学大学院農学研究科)

 

 

 

〔メロカンナは常設展示です〕