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2015/10/19(月)

日本産カワトンボ属の生殖行動に関する多型。

動物研究部の清です。
昆虫の中でも蛹(さなぎ)にならない不完全変態昆虫の研究をしています。

今回の「きずな展」において紹介するのはカワトンボ属と呼ばれるトンボのグループです。実はこのカワトンボの仲間は分類が非常に難しく、日本に分布しているものを何種に分ければいいのか、専門家の間でも長きにわたり論争がくりひろげられてきました。

2種?3種?4種?さまざまな仮説が提唱されてきました。近年のDNAの塩基配列を用いた解析により、2種に分ける仮説が採用されることが多くなってきました。なぜ専門家の頭を悩めたのでしょうか?実は2種それぞれの雄の翅の色に2種類の多型(橙色か透明か)が存在し、地域によってどの翅色の雄がいるかが異なるのです。

オレンジ色の雄は縄張りをはり、雌が交尾をしにくるのを待ちます。透明雄は物陰に隠れて飛んで来る雌を自分から探します。この翅の多型の組み合わせは2種間の相互作用により左右されているものと考えられます。

トンボの翅に書いてある数字は個体番号です。動物行動学においてはどの個体がどういった行動をとった、という情報を個体ごとに集計する必要があり、 トンボの場合は直接翅に番号を書き込むことが多いです。 今回は雄の行動についてしらべていたので、雄のみに番号を与えています。


写真撮影者:奥山永