モミジチャルメルソウ

植物図鑑

図鑑の見方

植物名

モミジチャルメルソウ 

学 名

Mitella acerina Makino 

科 名

ユキノシタ Saxifragaceae 

園内の花

研究者ノート

チャルメルソウの花は大変小さいので顔をかなり近づけるか、ルーペを使うかしないとどんな花なのかは分かりにくいかもしれませんが、他に似たものが無いとても奇妙な花です。針のように細長く、枝分かれしているのが花弁、黄色く5つ見えるのが雄しべ、真ん中にあり何やらくちびるのようにも見えるのが雌しべです。それにしてもなぜこんな形をしているのでしょうか?
実はチャルメルソウの花は、特殊な匂いによってキノコバエという昆虫を呼び寄せ、株から株へ確実に花粉を運んでもらっています。奇妙な花弁はキノコバエのか細い足の止まり場に、くちびるのような雌しべはキノコバエの顔にべったりとついた花粉をうまく拭える(すると受粉が達成されます)ように見事に適した形なのです。
チャルメルソウの仲間は日本に13種あり、これらは1種を除いて全て日本でしか見られないものです。このため、チャルメルソウの仲間の野外での様々な暮らしぶりを研究することで、植物が日本列島でどのようにしてたくさんの種に進化してきたのかを明らかにできると期待しています。
チャルメルソウの仲間には、コチャルメルソウのように本州、四国、九州のかなり広い範囲で見られるものもありますが、多くはとても分布が狭く、それゆえ森林伐採やダム開発などで簡単に絶滅する恐れがあります。例えばモミジチャルメルソウは京都府、滋賀県、福井県の一部に、タキミチャルメルソウは鈴鹿山地にしか分布しません。最近ではこれらの地域で増えすぎたニホンジカによる採食も大きな脅威になっています。
これほど分布が狭いのは、チャルメルソウの仲間の分散能力が極めて低いためだと考えられます。「チャルメルソウ」の名前の由来になっているラッパ(チャルメラ)のような形の実が熟すと、ラッパは上を向いて開き、ラッパの「口」にはたくさんの種子が並びます。雨が降ると、ラッパの口に落ちた雨粒が弾けて、雨粒とともに種子が外に流れ出ます。このうちの一部はそのまま沢の水に流されて親元を離れることができます。しかしチャルメルソウの仲間の種子は乾燥に弱いため、もし沢筋から大きく離れたとしても決して発芽できません。ですから、異なる沢の間をまたいで分散することすらほとんど起こらないのです。このようにチャルメルソウの仲間にとっての世界は大変狭く、それゆえ長い年月をかけて地域ごとに個性豊かな種が生まれたのだと考えられます。(奥山雄大) 

自然分布

日本(福井県・滋賀県・京都府) 

絶滅危惧ランク

絶滅危惧Ⅱ類 (VU) 

日本固有

筑波山分布

園内区画

絶滅危惧植物、圃場 

「おすすめ」
登場回数

6

スタッフによる今週のおすすめで紹介された回数を表します。

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